刃の研ぎ方、これはもう経験を積むほかないのかもしれません。でも理屈がわかれば苦手意識も軽くなりそうです。
といっても自己流なのでご意見ある方、遠慮なく指摘してください。
1.肥後守の刃はこうなっている
肥後守の刃の断面は、このような両刃になっています。 出刃包丁、日本刀はこのタイプです。カッターナイフもこれにあたりますね。良く似たものにはまぐり刃というのもありますが、これはちょっと別格です。
片刃は、切り出しや鑿(のみ)、菜切り庖丁、和かみそりなどに用いられています。肥後守にも、じつはこの片刃のものがありますが、ここでは省略させていただきます。
さて、肥後守ですが、両刃、といってもおおきく分けて二種類あります。二種の鋼をサンドイッチした板材からつくったもの、一種のみの鋼材からつくったものです。自分のもっている肥後守がどちらのタイプか、見分けるのは簡単です。刃を研いだときに、ちょうど硬鋼と軟鋼の色の違いが地紋として浮き上がってきます。また、チキリの部分は、そのままでも、色の違いからサンドイッチされている様子がわかります。
2.このようにする
では、研ぎ方ですが、原理は簡単。 傾斜した部分がそのまま平行に減った状態になり、丸まった刃先が尖ればいいのです。
そのためには、刃をぴったりと砥石にくっつけて、前後に動かします。基本はこれだけ、といってもいいのではないでしょうか。注意するのは、事前に砥石を水に浸して(5分くらい)水をたっぷり含んだ状態にしておくこと、そしてナニより重要なのは砥石が平面であることです。もし、まるく凹んだりでこぼこした砥石を使った場合、いくら研いでも無駄なのです。もちろん、研いでいるうちに砥石が凹んで丸くなってしまうのは避けられません。そんなときは、別の砥石あるいは(地面の)コンクリート、アスファルトなどの平らな部分を利用して、砥石を研ぐのです。
片面をある程度研いで、反対側に「かえり」がでたら裏側を研ぐ・・・というのがよく入門書にでているセオリーです。が、実際のところ難しい。私にもよくわかりません。:-)
ですから、とりあえず両面研いでみて、実際に紙を切ってみるとか、鉛筆を削ってみるなどして切れ味を確かめるというのが一番のようです。指の腹で刃先に触れてみるというのもあるのですが、人に勧められる方法ではありませんね。
3.安価で簡単な方法
「砥石は種類も多いし値段も高い」、誰もがぶつかるこの問題。私は比較的安価な人工砥石のほか、水ペーパーも使っています。水ペーパーというのは耐水性のある紙ヤスリです。ホームセンターに行けばA4くらいの大きさで一枚100円程度で入手できます。これを使うメリットは、まず安いこと、あらさ(180番、400番などと番手であらわします)が自由に選択できること。そして砥石は丸く凹んでしまいますが、水ペーパーなら下の台さえ平らなものを選べばいつまでも平らな状態で研げるのです。
この方法は私が考案したものではなく、骨董市でお話をよくうかがうワーフトの有賀渡氏から教わったものです。また、渡辺一生氏の「研ぎの技法」にも紹介されています。「やはり本物の砥石がいい」とおっしゃる向きもありますが、高価な砥石に恐れをなしているより、身近なものを利用する方が、私の志向にあっているのでここで「水ペーパー法」をお薦めしたいと思います。
やり方は簡単で、ペーパーを適当な大きさにちぎり、砥石サイズの台に巻くだけで立派な砥石(いや、砥板、砥台かも)のできあがり。カンナの台が、大きさ、平面性ともに良いようです。ガラスのように硬い素材よりも、木のようなものの方が研ぎやすいようです。裏はガムテなどでとめます。研ぐ際には水や油をかけていろいろ試行錯誤されるとよいでしょう。
4.参考講演
研ぎの世界は奥深いものです。これは2009年5月30日宝塚造形芸大・新宿キャンパスにて行われたイベントのようす。朝岡康二氏が語っています。
道具学会主催シンポジウム「切る・削る」より。